1966 昭和41年式 メルセデスベンツ 縦目  250S の復活の記録
2006.6.22
 お世話になっているショップの社長と 昭和55年から 25年間 車検切れ 
ここ4.5年エンジンも かけていない 縦目ベンツの引き取りに行ってきました。
ただし 1オーナー品川3ナンバー(残念ながら抹消済み)でモノは良いです。

 私は縦目ベンツに興味がありますが、今は手一杯。
 動態保存してもらいたいのと 時々は乗せてもらいたいので「是非、乗りましょう!かっこうよいですよ。」と
 後押ししました。

 果たしてこの後はどうなるか分かりませんが 記録を残したいと思います。
 250S は当時の縦目ベンツ W108としては 最初期で 一番エンジンが小さく
 内装もシンプル。簡単に言えば一番廉価で華は少ないです。
コラムのMT パワーウインドウ、セントラルロックはありません。 

 その分 軽快かつ気楽に付き合える縦目だと思われます。
 日頃の足として軽妙に乗ったら とっても よさそうです。
ベンツは経済的成功の証に見えるけど、縦目くらいになると完全に趣味車に見えて良い


この車は イエローハット東大和店で 整備中です。
進行状況に興味のある方は 見せてもらえると思います。



売りたし 250S

2009年6月
その後 膨大な時間とエネルギーを投入され
オリジナル状態で綺麗にレストアされた250S

縦目ベンツがお好きな方にお譲りします。興味のある方は
イエローハット東大和店
(〒207-0021 東京都東大和市立野1−1004
TEL:042-565-2218 )に展示していますので
ご覧になって下さい。素晴らしい乗り心地 ボディー剛性
各部の操作系の滑らかさ 重厚さにビックリされると思います。
エンジンは名機と呼ばれた直列6気筒でとても静かでトルクフルです。
ベンツはこの時代からこんなに凄かったのか!と驚かれることでしょう。

試乗歓迎、是非体験してみてください。


都内の某所にひっそりと潜んでいた 法人
1オーナー品川3 ナンバーの縦目ベンツ。

手前にあるのはR107500SL 右ハンドル!
ご高齢のオーナーさんはいつかリペアして
乗ろうとされていた。

車検は昭和55年に切れていて25年間経過


ご覧のとおり。古い車は佇まいが大切。
一見の綺麗さより ボディーがストレートであまり手がかかっていないのが良い。

走行距離は11万キロ
コラム4速MT

パワーウインドウ セントラルロック無し
(その後の縦目は全てこの装備がある豪華仕様が多い)

この当時のセントラルロックシステムは、バキュームで作動する。
リアのナンバープレートのロックを開けると ドアのロックまで開く機構。
これも無いので壊れないのが良い。
25年の歳月を感じさせる 雪(ほこり)景色。
エンジンは 当時のベンツのエンジンの中でも
名機と呼ばれた 2.5リッター 直6
キャブレターはゼニスのツイン。

驚くほど静かに回るエンジン。

果たして動くのか??
電動ファンは無い。ファンシェラウドも無い。

ラジエター横のウインカーレンズは1960年代までの
タイプ。その後はウインカーレンズはヘッドライトレンズ横に
移動する。
オーナーは早稲田の自動車部に在籍されていたそうで
パーキングブレーキは解除されていた。分かっていらっしゃる。
クラッチは抜けていたし ブレーキも効かないけれど
固着していないので 比較的簡単に引き出せた。

トランク下右のモールが外れている。
40年前の縦目ベンツが 25年ぶりに日の明かりを受け
移動を開始する。

車は動いてナンボ
問題は動かすためにどれくらいの労力 原資がかかるか?だ。

目一杯原資をかけて人に任せるのでは面白くない。
オーナーが手をかけ 自分の好み スタンスで取り組みリペアする。
そこに 人それぞれの個性が表れて面白い。

原資を持っている だけでは乗れないのが旧車。
300SELと違い ベニアが張ってあるシンプルな内装。
でも見て欲しい 驚異的耐久性を誇る ベンツの内装。
60年代でも初期の方が コストがかかっていてゴージャスと
言われる。

ホワイトステアリングは60年代の証。

ダッシュボードを見て欲しい これが 経年変化で歪み 切れてしまう
のが ビシッとしている。これが嬉しい。

パワーウインドウも無い。コラムの4MT。

ヘッドレストが無い シートベルトも無い。当時のオリジナル内装。

シートカバーが掛かっているので内装がそれ程汚れていないのが○
このルーミーな車内 とても気分が良い。

縦目ベンツ独特のかび臭いニホイがする。
縦目ベンツ乗りは このニホイを嗅ぐと 何かが触発される?かもしれない
シートの良さは 日本車の同時代と比べると明らか。
シートの角度調整の周辺のメッキの分厚さとかを知ると驚く。
当時のヤナセが国内で装着したと思われる トランククーラー
効きは 悪い と言われる人と 後頭部がしびれるほど効く(笑)
と言われる人がいる。
とにかくクーラーがあることは嬉しい。

既に風が出ることは確認している。
もう一度見て欲しい ダッシュボードの平面性。

ベッカーのラジオ
上質なフィールのコラムシフト。
ラジオの下にあるのは クーラーのスイッチと アンテナの上下スイッチ
グラスエリアの広いキャビン。
歪みが少なく モールの錆びも比較的少ない。

クーペほどガラスは湾曲していないけれど なかなか
良いカーブだと思う。


今の爬虫類みたいな顔で ガラスエリアの狭い車とは
全然違って見晴らしがよい。これぞセダン と言う形をしていると
思いませんか?
ピカールでちょっとだけ磨いたドアのキャッチ

このメッキの厚さ 深みのある輝き を見て欲しい。
今のプラスチックメッキとは全く違う 本物の輝きだ。

整備してみると分かる ボルトナット ねじのクオリティーが高い。
当時のアメ車だと タッピングねじが多かったり ねじの種類が
違っていたりする(笑)
ショップの若い人 と言っても青年もいるけど(笑)に
大好評。

直ぐにエンジンをかけたくなるのが人情。

ガソリンタンクには燃料が2/3くらい入っていた。ラッキー
オイルも生きている。
ブレーキオイルはからっけつ。
クラッチオイルも完走状態。

とりあえずバッテリーをつなぎ プラグを外してクランクして
オイルを回す。
ガソリンはまだ腐っていないようだ。

30分もしたら 見事にエンジンがかかった!
それも アイドルが触れずに鬼安定。
素性の良さが推察される。


この車は イエローハット東大和店で 整備されています。
ご興味のある方は 私のHPの話をしていただければ
見せてもらえると思います。
さて 今日は引き取りと エンジンがかかったまで。

燃料のホースからはガソリンが漏れる。
ウヲーターポンプは要修理
ベルト類は当然 要交換。

リアのハイドロコンペンセーターは終わっているかも。


今後がとても楽しみな個体です。

縦目ベンツねぇ いいやね〜 10年格闘したけど 今は6.3とか
3.5でなくてもOK。問題は 剛性感のあるボディー ゴムブッシュの無い
フロントの足回りからのハーシュを如何に軽妙にいなして 気分良く乗れるか?
です。

人様の車だけど 発掘につき合うと特別の感情を持ってしまいそうです。


 およそ20日経過しての進行状況 7月17日

発掘から20日近く経過しました。
私は ちょっとパーツとサービスマニアルを提供
しただけで 見に行っていませんでした。
そしたら 思いの外進んでいました。

整備を担当されている A氏
個体の素性の良さ、昔の車らしく整備が簡単であること
そしてベンツ自体の整備性の良さや造りの良さに
反応されているみたいでした。

苦労されたことも 嬉しそうに話をされる。
根っからの整備マン体質なんでしょう。

左はヘッドカバー エンジン形式も調べていませんが
とにかくアイドリングさせただけでも 精度の高さを感じさせる
音がします。
まず、初日からエンジンはかかりましたが、ブレーキは完全に
終わっていました。液は抜けて乾燥。マスターシリンダー、カップ
それぞれが完全に錆びて終わっています。

またブレーキのエア抜きのニップルも固着していて 回せば折れる状態。

ブレーキマスターは新品を購入するとお高いですのでリペアキットで整備
の予定。

クラッチもスカスカでしたが これは何とかなりそうな状態でした。
日本で後付けされた トランククーラー。

社長はクーラーの専門家でもありますので ここはきちんと
クーラーが効く状態にまで持ってゆくことでしょう。
ラリーカーの240RSだって クーラーを装着していましたし。

果たしてこのトランククーラーを活かすのか どうか?
クーラーの処理が見物です。

尚配管はボディーの外側を通っていて、フロントタイヤの
フェンダーの中で見ることができます。はっきりいって効率は
悪いですよね。

リアがオリジナルの高さになりシャキッとした状態。

これには訳があります。縦目の金属バネはリアサスが スウィングアクスルに
なっています。完全な独立懸架でなく 関連懸架 とでも申しましょうか。
左右のシャフトが ハイドロコンペンセーターショック と言うでかい水筒くらいの
棒でつながっています。これの中には ショックが2本入っていて 左右のシャフトが
縮んだり伸びたりを 微妙にコントロールしています。スタビライザーの働きもします。

この ハイドロコンペンセーターがへたるのです。
たぶん今ディーラーで購入すると15万円はするでしょう。

それで 私の縦目には 対策品として 純粋なバネ を装着してありました。
これでは 本来の設計どおりの足回りではありません。
結局私は自分の為にに BOGEのハイドロコンペンセーターをアメリカのアジットから
輸入して装着しました。その時の嬉しさ 忘れがたいです。

 リアは オリジナルの ハイドロコンペンセーター に 限る

今回 ショックをOHする為に 私のバネを入れて車高を保っているのです。
でも 車高がきちんとすると どうです この姿  いいでしょう〜!

手前の528は私が借りている車。いいですわ〜 こういった良い車に乗ろう!
さて これが縦目の内装を引き立てる ウッドパーツ。

フロントガラスの手前のウッド(画像で一番右)は 取り外し
そして装着にえらく難儀すると思われます。

A氏は こともなげに
「大丈夫 暖かい日だと OK」

ウッドはたばこのヤニで黒くなっているのでした。
どうもオリジナルの塗装。これは 殆どの車が再塗装されていて
品が無くなってしまっています。

磨きによって綺麗になるでしょう。
250 280は これがシンプルなウッドなのですが ゴージャスを
求める方は エアサスの300の内装を見ると良いでしょう。
配線類もいずれ 刷新されるそうです。
コラムのMTは カラーやブッシュがへたったり 割れて朽ち果てて
いるので動きが渋くなっています。

これはパーツが出てきちんと整備されれば ベンツらしい 重厚でかつ
滑らかなシフトフィールが楽しめることでしょう。

ステアリングフィール ブレーキタッチ ウインカーのスイッチの感じ
シフトフィール 

こういった感触が 如何にも精度が高く 上手く調整された重さ 動き 遊び
の中でセッティングされているのを感じると ベンツの虜になります。
キャデラックのウインカースイッチのフィールとは 天と地の差であります。
どうです、この広い室内。
このボディーはショートボディーですので ロングはこれから10cm
長くなります。リアの広さはロングだけど ショートボディーは当然
ハンドリングが良くなります。

ドアのウエザーストリップス モール類 全てがまだ手に入る。
ここがベンツの良いところ。
私がウインカーのリレーを町の部品屋さんで注文したら 当然の様に
翌日には入荷していました。

これを知ると 数年前のアルファロメオに乗っている人は悔しがること
でせう(笑)

ベンチシートっぽい シートに座ってみてください。
気分よいですよ〜!
磨かれたダッシュボード。
歪み、割れが全くないのが奇跡的 良い個体です。
いくらベンツの内装が丈夫だといっても ダッシュは 割れたり
盛り上がってしまいます。

前のオーナーはたばこを吸う人だったみたいで ヤニを取るのに
苦労していました。ヤニを取るとオリジナルの色が蘇り綺麗。

ベッカーのラジオも音が出て良い状態。

古い車は みんな 綺麗さに感心を持ちますが 内装の綺麗さ オリジナルの
度合いの高さに気を使ってみてください。
変に張り替えた車は 当時の雰囲気がかなり違ってしまうのです。

アメリカはどちらかと言えば 下品なくらいでも綺麗にするタイプ
ドイツ は オリジナルを活かした 多少ボロくてもオリジナルを重視する
タイプ と分けられるかもしれません。
もちろん どちらも ピンの世界は 新車同然 品も最高の世界ががあることは
間違いありません。
国民性の差がレストアに多少反映されるようです。

この縦目はまずは オーバーレストアでなく普通の整備 普通に掃除して
乗る とのことです。250Sは最も廉価版ですから それなりの気楽なスタンスで
よいでしょう。でも機関はしっかり整備して存分に走らせる。
ベンツは実用車ですから、道具を使う姿勢が良いと思います。
当初漏れ漏れだった燃料の漏れは 真鍮?のホースに穴が開いていること。

燃料ポンプは機械式でそこからエンジンオイルにガソリンが混入すること。

25年放置されていた車は そこら中が要整備or要交換です。
ただこれだけエンジンルームがスカスカで パーツがシンプルだと やる気が
起きますし 可能ですよね。

A氏が言っていました
「40年前の車でも縦目なら整備できる。でも今のベンツのS 40年後 
 一般のマニアが整備できるでしょうか?」

コンピューター制御にパーツのユニット交換が当たり前になった今 それは
無理だと思います。素人 or 多少整備できる人が手をかけて維持できる車
車をリペアして調子よく永年乗って楽しむには 縦目ベンツは良いでしょう。

「ベンツは丈夫」 一部正解 殆ど間違いです。消耗品も多いですし 手もかかります。
つまり維持費はかかる ってことです。でもこれくらいの年代になると ボディーや
パーツがしっかりとしていて パーツがまだ造られていて供給され それも海外からの
輸入も行えば 他の国の車より 安く 簡単に維持できる。それが魅力だと思います。

いずれにせよ 古い車を バッチリ整備してガンガン走ること 最も贅沢な趣味には違い
ありません。原資を持っているだけでは遊べない世界 「粋」 「洒落ている」 の世界
ではないでしょうか?
現在の課題は ブレーキ関係
前述のとおり 全て フルにOHが必要です。私はマスターシリンダーを2回
新品に交換しましたが お高かったです(涙)

電気系はシンプルで問題ないでしょう。
燃料ポンプは 機械式から 普通の電磁ポンプに換装するかもしれません。
私個人としては 点火をMSD等の多重点火にしてもらいたいです。ポイントレスね。

ただ 本来の性能が出ていれば 点火もポンプも 最高速度を維持したまま
走り続けられる設計になっているのがベンツの凄いところです。
200km/h と書いてあれば それで走り続けても全くヒートしませんし
パワーも出続けます。ただ 止まらないので何かあったら大変ですが・・・

如何にもベンツしている顔
運転すると フェンダーの盛り上がりと 中央のスリーポインテッドスターが
何とも言えない 世界を醸し出す。見晴らしは相当良いです。

ワイパーは左右が腕組みしている状態。それが両方開いて戻ってくる。
これも充分に使えます。

ヲッシャー液は足下のクラッチの上にスイッチがあります。

三角窓は 大変有効でとても涼しい。
空気の入れ換えも簡単。

幅181cm 長さ499cm 今から見ればそれ程大きくはありません。
立体駐車場もOK。

そうそう ホイールキャップを取ると見窄らしい鉄ホイール。これがもの凄く
精度が高く ガッチリできているんです。機会が有ったら見てみてください。

アホみたいに誠実に造ってあるところがあったり 無骨で格好悪かったり
それが 縦目時代のベンツです。
さて 名器と言われた 直列6気筒エンジンを 搭載した 昭和41年式 250S

どの様に蘇るのか お楽しみに〜!



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