コーヌステレスコープデンチャー 症例2(治療中)


この、患者さんは歯科治療が怖くて大嫌い。
歯を削る時は、うぅ〜〜と声を出していました。
義歯の無い状態だったのを、何とか一通りの治療が終わりました。
ご覧の通り、上の顎には、前歯が5本だけです。
食事は出来るようになったものの、歯の大切さに目覚められて、
現状に不安を持ち始めたそうです。
健康保険で造った義歯です。前歯の端の歯にかける金属をクラスプと
呼びます。
粘膜部分以外は、このクラスプ2カ所だけで義歯の維持を負担しています。
もっと前歯にかければ負担も分散できますが、見た目も気になります。
義歯を装着した状態です。これでも、クラスプが見えるのが気になるのと、
やはり、残りの歯を大切にしたいとのこと。
クラスプがかかる歯の寿命が気になるそうです。

心配のとおり、クラスプのかかっている歯の寿命が問題です。
歯槽膿漏の予防の為のブラッシング以外に、咬合力の分散化を
図らなければなりません。
デジカメ画像で見難くてすみません。レントゲン画像
を見ても、前歯を支えている骨は、根っこの半分以下
になっています。

インプラントは、骨の量もあり候補の一つですが、
欠損歯の数が多く大がかりです。義歯に慣れられた
こと、費用の面、前歯の見た目も気になるとのこと、
以上を考慮して、総義歯タイプのコーヌスデンチャー
による治療を提案させていただきました。

左の写真は、便宜的に歯の神経を取って、充填した
X線画像です。支持骨の量、歯の削除量を鑑みて
歯の神経を取りました。神経を残すべきか?は議論
が別れるところだと思います。
随分と歯が小さくなってしまいました。
残っている5本の内、4本は健全なご自身の歯だったのです。
もう、後戻りはできません。大切な歯質を削ったのですから、
責任は重大です!

歯を削るディメリットを大幅に上回るメリット、提供しなければ
信用を失いかねません。
上と同じ時の写真です。

歯経部(歯と歯肉の境)に糸が入って黒く見えます。
歯肉圧排と言い、歯肉からの出血を止め、型を取る材料が
歯肉の奥深くまで注入できる様にする為に行います。

型が歯の姿を正確に表せるか?
精度が、出来上がった補綴物の価値になります。
型を取りました。

歯の部分の奥の色が違うのは、2種類の材料で型を取っているからです。

歯肉圧排していた部分に型の材料が入って、出っ張っているのが分かる
でしょうか?この部分に金属が入るのです。
専門的な話になりますが、今手に持っている型は、歯を削る前の簡単な型です。
これを、仮歯を造る為にとっておきます。

上の様に歯を削ってしまいました。今までの入れ歯は当然引っかからないし、
歯もあのままでは帰れません。
入れ歯の回りにあるのが、削る前に取っておいた簡単な型です。
型を印象と言います。

これは、入れ歯を患者さんの口に入れてもらい、簡単な型の中に即時重合
レジン(液と粉で固まる樹脂)を流し込み口の中で削った部分を復元します。
これで、仮歯を造るのです。
黄色い樹脂の部分が今回削った量に相当します。
今までの義歯を改造して、仮歯ができました。
治療では、その日に仮歯を造ることが必要で、思いの外手間と時間が
かかります。

慣れない時は、こんな仮歯で1時間もかかってしまいます。
作った仮歯を患者さんの口腔内にもどしたところです。

簡単な型を元に樹脂を流し込みましたから、削る前の歯の形に戻っています。
今回造る義歯は、この様に、削った歯の上に被せるタイプの義歯です。
オーバーデンチャーと言います。
今日の治療時間は、およそ2時間でした。患者さんも大変です。

                            

                        その2 に続く

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