ーヌステレスコープデンチャー 症例2 (完成)

似たような絵ですが、今日はできあがったデンチャーを患者さんに装着
する予定です。内冠は、完全に磨き込まれました。

内冠の形状は当初、レジン部分の為に前の面を削った形も検討しました。
維持力の関係で現状の円錐台の形状です。

問題は、出来上がった義歯の外冠の全面にはるレジン部分の厚さが
取り難いことです。色が出しにくく、形状がモッタリとする傾向にあります。
これが、出来上がったコーヌステレスコープデンチャーの総義歯タイプです。

歯は5本残っています。その上に総義歯タイプの入れ歯が被さります。

装着して使い、食事の後に外して、義歯の掃除、歯ブラシをしなければ
なりません。外出時など、外しにくいことがあります。ここが、義歯タイプ
の面倒なところです。
右が仮歯として使っていただいた、最初に保険で入れた義歯です。

違いが分かりますでしょうか?

床の部分の面積が違います。特に前歯の下の部分がコーヌスの場合あり
ません。ここが、タ行、サ行、チャとかチョとか発音する度に、舌の先端が
当たる部分で、慣れているとは言え、義歯の床が無いのは発音し易いのです。
お茶の温度が分かりやすい等の熱の伝導の問題もクリア出来ます。
模型上ではこの様に入ります。

前歯部分はレジンをはってあります。
歯とはの間の部分のボリュームが大きく、実際のブリッジとくらべて
見た目で少々劣ります。

逆に、息が歯の付け根の空隙から漏れず発音し易い利点もあります。
内冠を試適しているところ。

まだセメントにて合着はしていません。
義歯をその上に入れてみます。

所定の位置まで入ることを確認します。

この時入らなければ(前回のメタルフレームの試適の時に確認してあるので安心)
最初からやり直しです。段々、緊張が高まってきます。
ピンぼけ写真になってしまいましたが、これが、コーヌスの内冠を合着する
時のセメント、機材です。スーパーボンドと言う接着剤を使っています。

粉は、左上のピンクオペーク、厚さが薄く、流れが良いので使っています。

さて、セットです。アシスタント3名と段取りを決めます。時間がかかると
硬くなって内冠が少し浮いてしまいます。それで全て台無しになります。
最も緊張する時です。さあ、セットです。
セメントで合着しました。

思わずお祈りしてしまいます。

何故なら、ここで入らなければ、最悪、内冠を削って割って最初の印象から
やり直しになるからです。患者さんの治療を受けた時間、技工士さんの手間
全てがやり直しになることは避けたいのです。
引きつっていますが、安堵の笑顔です。

私達歯科医師は、治療上、ある意味で作品が完成する喜びを味わえます。
完全無欠の完璧な仕事は、正直私の仕事ではありません。どこかに、至らぬ
点があり、無念に思ったり、反省せざるを得なかったりします。

上手くいった時の喜び、仕事をしながら味わえるのが歯科の魅力です。

ただ、診療代を頂戴して、勉強させてもらっている、これが私の現状です。
患者さんの口腔内に装着したところ。

私の経験では、最初から沈み込みが所定のところまで行っています。
0.3mm近く浮いていて、調整してもらい、使ってもらって所定の位置に
入ると言うパターンも多いです。

歯の根っこの周囲の歯肉が白くなっているのが分かりますでしょうか?
これは、外冠が歯肉に当たり、圧迫しているのです。調整と慣れが必要です。
下からみた画像です。

口蓋(上顎の真ん中から奥の部分)に床やバーがありますと
異物感があります。薄く強い金属にして対応したりします。

今回は、前歯の本数が5本であり、犬歯(太くて長くて強い)を
2本とも使えたために口蓋部分の床を無くせました。歯の状態、本数
残っている歯の種類によって、この設計が同様に出来るとは限りません。
装着した日に、少しだけ噛み合わせの調整をしたところです。

歯科医師の方が見ると分かると思いますが、それ程、緊密には噛んでおり
せん。これから使用してもらい、義歯の沈み込み、噛み合わせの変化に対応し
て調整して行きます。

歯のある部分と歯のない入れ歯の部分、噛む力が強いのは入れ歯の部分です。
沈み込みはどちらが多いか?当然入れ歯の部分です。沈み込んで前歯を揺らします。
装着した日の入れ歯部分の床と顎の粘膜との当たりを白いペーストで調べて
います。浮いているところは白くなり、当たっている所は床の赤みが強くなります。
初日としてはかなり適合が良い方です。ただ、左側(向かって右側)は噛み合わ
せが強いのもあり、このままでは傷になる程当たっています。

調整しましたが、後ほどこのペーストでは分からなかった、口を大きく開けると
入れ歯の縁が当たって痛い、義歯が外れそうになる、とのことでした。
現在、義歯を1回調整しております。
これまたピントがぼけています。

口をイ〜〜ってしてもらった所です。歯の長さは削る前より1mm弱
長いでしょう。果たして、気に入ってもらえるか?

見た目は家族、他人の意見が重みを持ちます。
思っていても遠慮されておっしゃらない方もいます。
ブリッジと異なり、内冠を借り止めできないので、今日はこれまでです。
患者さんに鏡で見てもらいます。

新しい義歯を受け入れるには少し時間がかかると思われます。

煎餅を食べてもらいます。写真を取ったり、人前で食べるのは恥ずかしい
とのこと、もっともですよね。

人の前で口を開けて食べること、口元を抑えて笑う仕草が当たり前の方
には、当然見せたくないお気持ちも分かります。

まず、今までの義理より調子がいいか?喜んでもらえるか?
そして、10年以上経った時、喜んでもらえているか?

ずっと先になって、評価されることになるでしょう。

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