コーヌステレスコープデンチャー 症例 1

これは5年経過した、コーヌステレスコープのフルブリッジ
タイプの総入れ歯です。支台歯は11本です。

2年ぶりの検診で来られました。心配していた患者さんです。
当初、固定式(接着する)ブリッジを希望されましたが、
殆どの歯の虫歯が酷く、長期間安心して使えるブリッジは
不可能と判断しました。
それで、取り外し可能なコーヌスデンチャーにしました。
支台歯が多いので、前歯はブリッジの外見と装着感です。
前歯の裏側に床(樹脂の入れ歯部分)がありません。

下の内冠がはまる、雌型の外冠で構成されています。
金属は、白金加金、白い部分は硬質レジン(樹脂)です。
この白い部分を陶器(セラミックス)でつくると、割れてしまう
為に、色調の変化のある、レジンを使わざるを得ません。
支台歯(コーヌスの内冠がついている)の状態です。
決していい状態とは言えません。
歯肉は腫れ、左上の前歯の付け根は、虫歯で黒くなっています。

元々、歯肉の大変深いところまで虫歯だった歯を抜かずに使って
おりますので、虫歯を取りきれなかったのか、それとも新たな虫歯
が出来てしまったのかもしれません。

ただ、もしこの内の何本かを残念ながら抜かなければならなく
なったとしても、このまま、この入れ歯は使えます。ここが、
固定式のブリッジとの違いです。
この支台歯はすべて、内冠があるテーパー(先細り)に設定され
ています。いずれかの歯が傾いたり、内冠がずれて装着された
だけでも、求める深さにデンチャーが入りませんし、維持力も設定
どおりにはなりません。ここが、コーヌスデンチャーの難しいところ
でもあります。

装着直後は、指で外れない程強くなり、その後安定し、年月と共に
維持力が弱まってくる傾向があります。たぶん、デンチャーの外冠に
合わせて支台歯が動く為と思われます。
5年経過して、歯肉は退縮しています。当初は内冠の深いところは
全て、歯肉の中に入っていました。
つまり、5年の間に、歯の回りの骨が吸収(溶けて)して高さが
減り、それに伴い歯肉も下がった為に、歯の根が見えてきました。

この骨の吸収をどの様に想定するかも、長期の予後を考える時に
大切です。コーヌスデンチャーの様に、オーバーデンチャー(歯の上に
被せるタイプの義歯)は、歯にかかる、垂直的、水平的な力の
コントロールを誤ると、思いの外、骨の吸収が進みます。

部分入れ歯は、噛む力を全て歯に負担させないで、床の部分で顎提
(歯の無い部分の歯肉)に負担させて噛む力を分散させています。
総義歯は、全て顎提に咬合力を負担させています。

この歯の負担と顎堤負担のバランスを経過的に調整する必要が
あります。
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