始まりはお歳暮をもらってしまったことが原因だ


 世の中にタダより高いモノはない、と言う諺があります。

 私はいつも、「お得」であることが、人生の価値判断にあります。FICARでお友達に
 なった(没落したとも言う) M月さんが、私の家に ’80BMW635 中古ど並行MTなれど
 程度極下を持ってきました。本人はどうしても私に見せたいと言う。

 それで夜見ました。白くて一見綺麗です。ボンネットを開けました。水車が回っていました。
 なんと、ヲーターポンプからを水を吹き、顔が濡れたのです。そんな車を彼は、必死の思いで
 水を足しながら棄てに来たのです。私には悟られない様に。

 そして私に言いました。

 M月「ね、これあげますよ。日頃お世話になっている わんこ君に。」
    「そうだ、タダでは貴方も納得しないでしょう。ガソリン満タンだから1万円でどう、ね、どう?」
  
  クリクリとした、つぶらな瞳で青年は言います。何か変ですが、すがすがしい顔を作っています。

 わんこ「・・・・・(考えている様で考えていない)・・・(あの憧れの635に乗れるそれも1万円)・・・
     ・・・・(車検があと2週間ある、それだけ乗れればいいよね)・・・(今、賃貸駐車場が1台
     余っているのよね)・・・・」 1分経過

     「よし、それもらった!」

 と財布の中に1万円しかないそのお金を渡してしまったのです。


 そしたら、その途端M月さん、

 M月「やった〜、もう決まったもんね。あ〜清々した〜。いらないって言われたらどうしようかと
    思っていたんだよ〜」

 ですって!普通、こんなに態度をひるがえしたりしませんよね。でもあの方はそう言う人なんです。

 でも、私は正直嬉しかったんです。だってですよ、バブルの頃の635と言いましたら、それはそれは
 格好良かったんです。あの素晴らしい車がたったの1万円 なのです。どう考えたってお得に思えた
 んです。あの時は。

 この時はそのお歳暮が、私のその後何年かを、そして原資の大部分を吸い取る恐ろしい贈り物だった
 のだとは 夢にも思いませんでした。

  ダダより高いモノは無い!